環 A 上の(左または右)加群 M は、その零化イデアル AnnA (M) が {0} であるときに、忠実(英: faithful)であるという。言い換えると、各
の作用が自明でない(ある x ∈ M に対して α・x ≠ 0)ということである。別の言い方をすれば、対応する表現
が単射である。
任意の加群に対して、次のようにして忠実加群を対応させることができる。環準同型
は、単射準同型
によって分解する。ker ψ は AnnA (M) に他ならないので、
によって M に A / AnnA (M)-加群としての構造が入り、このとき
は単射なので M は忠実である。
性質
A-加群 M の任意の元 x に対して Mx = M とおくと、写像
![{\displaystyle \phi \colon A\to \prod _{x\in M}M_{x},\quad a\mapsto (ax)_{x\in M}}](https://wikimedia.org/api/rest_v1/media/math/render/svg/89a1952e60f8105fe677c1aaac1dd2503ab20384)
は A-準同型である。このとき ker φ = AnnA (M) なので、準同型定理より
![{\displaystyle A/\operatorname {Ann} _{A}(M)\cong \phi (A)\subseteq \prod _{x\in M}M_{x}}](https://wikimedia.org/api/rest_v1/media/math/render/svg/089386b3f926a51c5b1a2703c7d3d2e9d7b91771)
を得る。したがって M が忠実加群であれば、A は(自然にA-加群と見て)
の部分加群に同型である。
参考文献
- 岩永, 恭雄、佐藤, 眞久、佐藤眞久『環と加群のホモロジー代数的理論』(第1版)日本評論社、2002年。ISBN 4-535-78367-5。