マニュマチック

マニュマチック英語: manumatic)という自動車用語の現代的用法は、運転手が、典型的にはパドルシフターやステアリングホイールに取り付けられた押しボタンシフトレバーでの「+」および「−」入力を使って特定のギアを選択することができるオートマチックトランスミッションを意味する[1][2]。「マニュアル」と「オートマチック」のかばん語である。日本ではこの用語はほとんど使われず、マニュアル(MT)モード付ATと呼ばれることが多い[3]。ギアを持たないCVTでも疑似マニュアルモードで変速比を選択できるものもある[4]

オートマチックトランスミッション

1940年代に油圧制御オートマチックトランスミッションが大衆化して以降、多くの自動車用トランスミッション(変速機)はギア選択の間接的制御が可能となっている。これによって下り坂でエンジンブレーキを効かせたり、牽引時にオーバードライブ(英語版)ギアの使用を防いだりすることが可能になった。典型的にはレバーをギアセレクタ上の「3」、「2」、「1」といった位置(4速オートマチックトランスミッションの場合)に動かすことでこれを行うことができた。

「マニュマチック」機能付きのオートマチックトランスミッションは、運転手が変速したい時にシフトアップまたはシフトダウンをシステムに要求することができる。しかし、ほとんどのマニュマチックモードはエンジンがストールしてしまう(回転数が低過ぎる)あるいは回転速度が上がり過ぎるような時はギア変更の要求を受け付けない。

商標

1950年代の自動化クラッチシステム

イギリスのオートモウティヴ・プロダクツ社は1950年代に「Manumatic」と呼ばれる自動車向けの自動化クラッチシステムを生産し、1955年にアームストロング・シドレー サファイア236(英語版)、1957年にはヒルマン・ミンクス シリーズ2[5]などに注文装備として採用された[6]。この「Manumatic」は油圧を用いた2ペダル式のトランスミッションで、シフトチェンジ自体は手動で行うものものであった[7]。技術的には未成熟で「実用化という面では失敗に終わり、もはや過去のものであることをメーカーのオートモティブプロダクツでは認めていた。」と1960年時点で報告されている[8]

現代の自動車用語ではセミオートマチックトランスミッションの中の「クラッチレスマニュアルトランスミッション」に分類され、マニュアルモード付きオートマチックトランスミッションを指す後の用法とはほとんど関係がない。

脚注

  1. ^ “MANUMATIC English Definition and Meaning”. Lexico.com. November 4, 2021時点のオリジナルよりアーカイブ。2022年8月24日閲覧。
  2. ^ “「マニュアルのようなオートマってなに?」”. webCG (2002年1月9日). 2022年9月20日閲覧。
  3. ^ “【多用はNG? 問題なし??】マニュアルモード付ATは使いすぎるとクルマに悪いのか?”. ベストカーWeb (2019年4月9日). 2022年9月20日閲覧。
  4. ^ 山本晋也 (2019年12月4日). “ショックがない無段変速がメリットなのになぜ? クルマのCVTに手動変速可能なパドルが装備されるワケ (1/2ページ)”. WEB CARTOP. 2022年9月20日閲覧。
  5. ^ Workshop Manual 1957.
  6. ^ 世界の自動車 1958, p. 71.
  7. ^ Abbey, Staton. Practical Automobile Engineering - Clutch Systems. pp. 193–194. 
  8. ^ 2495773/5, p. 134日本の自動車メーカー7社による技術者訪欧調査でのレポート

参考文献

  • “Automotive Products brochure: 'Two-Pedal Motoring by Manumatic'. Standard on the Sapphire 236”. The National Archives chapter=144 - Coventry Archives. 2024年7月31日閲覧。
  • 「イギリス」『世界の自動車 昭和33年版』朝日新聞社、1958年、71頁。NDLJP:2479928/43。 
  • Manumatic Transmission Workshop Manual - Rootes Hillman Minx Series 2. AUTOMOTIVE PRODUCTS COMPANY LTD. (1957) 
  • 『欧州の自動車研究管理 : 渡欧自動車研究管理専門視察団報告書 (Productivity report ; 第115)』(レポート)日本生産性本部、1957年。NDLJP:2495773/5。 

関連項目