フェイェール核

数学におけるフェイェール核(フェイェールかく、: Fejér kernel)は、フーリエ級数に対するチェザロ和を閉じた式で与えるのに用いられる。フェイェール核は非負積分核からなる列であり、その全体は近似単位元を生じる。名称は、ハンガリーの数学者リポート・フェイェール (1880–1959) に因む。

いくつかのフェイェール核を描いたもの

定義

n-番目のフェイェール核 Fn

F n ( x ) = 1 n k = 0 n 1 D k ( x ) {\displaystyle F_{n}(x)={\frac {1}{n}}\sum _{k=0}^{n-1}D_{k}(x)}

で定義される。ただし、

D k ( x ) = s = k k e i s x {\displaystyle D_{k}(x)=\sum _{s=-k}^{k}e^{isx}}

k-番目のディリクレ核である。これはまた閉じた形で

F n ( x ) = 1 n ( sin n x 2 sin x 2 ) 2 {\displaystyle F_{n}(x)={\frac {1}{n}}\left({\frac {\sin {\frac {nx}{2}}}{\sin {\frac {x}{2}}}}\right)^{2}}

と(式が定義できる範囲で)書くこともできる[1]

性質

フェイェール核の重要な性質は、函数としての正値性 Fn ≥ 0 および、畳み込み作用素 Fn の汎函数としての正値性、すなわち周期 2π の正値函数 f ≥ 0 に対し

0 ( f F n ) ( x ) = 1 2 π π π f ( y ) F n ( x y ) d y {\displaystyle 0\leq (f*F_{n})(x)={\frac {1}{2\pi }}\int _{-\pi }^{\pi }f(y)F_{n}(x-y)\,dy}

が成立すること、さらに畳み込みに対する近似単位元を与えること、すなわち

f F n f {\displaystyle f*F_{n}\to f}

が満たされることである(f は連続、または Lp([−π, π]) に属す任意の函数)。これはヤングの不等式から、0 ≤ p ≤ ∞ なるとき fLp([−π, π]) に対して

F n f L p ( [ π , π ] ) f L p ( [ π , π ] ) {\displaystyle \|F_{n}*f\|_{L^{p}([-\pi ,\pi ])}\leq \|f\|_{L^{p}([-\pi ,\pi ])}}

が満たされることからでる。f が連続であるときも同様の評価が得られ、実際に f が連続ならば収斂は一様である。

関連項目

参考文献

  1. ^ Hoffman, Kenneth (1988). Banach Spaces of Analytic Functions. Dover. p. 17. ISBN 0-486-45874-1